GoToトラベルを利用して母娘で旅行
新型コロナウイルス感染症の拡大被害を受けた旅行業者をサポートするために 2020年7月 から始まった “Go To トラベル キャンペーン”。
10月から東京発着の旅行や東京都在住者も対象になったこともあり、行楽の秋が本格化してきました。
会員数が 260万人 を超える女性向け予約サービス、オズモール が 2019年 に母と娘の計 1,800人 に行った調査によると、約60% の方が「母と娘の 2人 で温泉旅行をしたことがある」と回答したそうです。
未経験の人も、その内、約80% の方が「今後、一緒に温泉に行きたい」と回答しており、多くの方が母娘 2人 での温泉旅行に興味をもっていらっしゃることが分かりました。
今回は、そんな母娘の温泉旅行に関して、私がとても感動したエピソード、そしてその物語の鍵となった手話についてご紹介します。
お耳のふあんを持っていらっしゃる方々に、是非、読んでいただきたいお話です。
執筆者:青本 りよ
Global Writer
旅立つ母の、娘に対する愛が象徴的な映画『湯を沸かすほどの熱い愛』
2016年 に公開された映画『湯を沸かすほどの熱い愛』をご覧になったことはありますか?
『湯を沸かすほどの熱い愛』は、潰れかけの銭湯を経営する主人公、幸野 双葉(母親役)が病で余命 2カ月を宣告され、それを機にバラバラになってしまっていた夫や娘たちを家族として立ち直らせるために、奮闘する感動作です。(次に物語の核心部分をご紹介します)
劇中で死期が迫った 双葉 は、娘の 安澄 らを連れて沼津旅行に出かけます。安澄 に、彼女の産みの親である 君江 と会わせることが目的でした。
聴覚障がい者である初対面の 君江 と、安澄 は手話で会話します。「いつか役に立つから」と、双葉 が 安澄 に習わせていたのでした。
その後、双葉 の病状が悪化したため母娘の旅行は中断してしまうことになります。しかし、双葉 の尽力により家族はそれぞれ 双葉 亡き後も、前向きに生きる強さを身に付けたことを示すエンディングとなっています。
物語の鍵となった旅と手話
母娘の旅行の目的は、安澄 を産みの親・君江 に会わせることでした。
安澄 は 双葉 によって手話を勉強していたおかげで、君江 と、初対面にしてコミュニケーションを取ることができたのです。
もともと、耳が聴こえない人たちの間での意思疎通のために発明された手話。
手話は世界共通言語だと思われがちですが、手話には言語と同じように、文化的・地域的な違いがあるそうです。
さらに日本でも、手話には「日本手話」と「日本語対応手話」の2種類があります。
「日本手話」は、用法はもちろん、「日本語」とは全く別物の独立した言語です。
一方で、「日本語対応手話」は、音声言語である日本語に、手話単語を一語一語あてはめていくもので、健聴者が手話サークルや手話講習会等で学ぶ多くの手話はこちらにあたるそう。
耳が聞こえない方にとって、手話は、大切なコミュニケーション言語なのです。
手話を使った旅行サポート
団体ツアーだけでなく、オンライン予約や個人旅行など、旅の需要や形は時代に合わせ変化していますが、旅先でその歴史を知ったりと、いつの時代も旅は新しい発見や驚きに溢れています。
ですが、お耳のふあんを抱えていると、旅先でガイドの説明がわからなかったり、トラブル時の対応に不安があったりと、心配なことも多いと思います。
そんな心配のタネを取り除くべく、H.I.S では 2002 年に、H.I.S ユニバーサル ツーリズム デスク が創設されました。
なかでも、「しゅわ旅仲間」は、お耳にふあんを抱える方が安心して楽しく旅行できるよう、手話のできる添乗員が同行してくれる、お勧めツアーです。
旅の道中の不安が解消されるのはもちろん、観光地の説明も、詳しく受けることできます。
また、「ずっと添乗員に同行してもらう必要はないけど、所々でサポートがあったらいいな」と思う方には、「トラベル手話通訳サポート」が用意されています。
手話対応の添乗員は同行しませんが、旅行中の機内や観光、食事中の手話によるサポートを受けることができるサービスです。
また、東京都の 京王プラザホテル は、聞こえにくい方や、ろう ・難聴の方々向けに “ユニバーサルルーム” を用意しています。盲導犬・介助犬・聴導犬を全館で受け入れているほか、コールセンターのオペレーターによる遠隔手話通訳サービスを利用することもできます。
このように、体に不安を抱えた人の多様なニーズに合わせ、独自の工夫をしている旅行会社やホテルが増えつつあります。
お耳の不安を理由に、大好きな家族や友人との旅行を躊躇している方々にとって、一歩踏み出すきっかけにつながるのではないでしょうか。
著者の想い
“手話は万国共通” のものだと思っていたため、手話にも地域性があることや、
日本にすら複数の手話があるということに大変驚きました。
確かに、ジェスチャーひとつとっても、日本と海外では違うことが沢山あります。
手話に各国それぞれの文化や地域性があることは自然なことなのですね。
Go To トラベル は、キャンペーン期間延長の声も上がっていますし、
これを期に、たくさんの方に障がい関係なく、旅を楽しんでほしいですね。
そのためにも、京王プラザホテル や H.I.S ユニバーサル ツーリズム デスク のようなサービスがさらに充実することを願います。
出所
オズモール, “「太っ腹の母」と「情報力の娘」。持ちつ持たれつ楽しい母娘旅”, 2019
“湯を沸かすほどの熱い愛, 2016
参議院第三特別調査室, ”日本語と日本手話― 相克の歴史と共生に向けて ―”, 2016
朝日新聞, 聴覚障害者の宿泊拒否 熱海市の施設「専用施設利用を」”, 2018
ことば研究所, “ことばの疑問”, 2018
京王プラザホテル, “聞こえにくい方、聾・難聴の方へ”2020
HIS, “聴覚障がいH.I.Sユニバーサルツーリズムデスク”, 2020