テレワークは難聴者の不安を助長する
今、新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が激増しています。
読者の皆さまもテレビ CM などを通して、テレワーク普及を促進する商品・サービスを目にされる機会が増えたのではないでしょうか?
“働き方改革推進支援助成金” などの助成金も誕生し、政府・自治体が普及を後押しする中、テレワーク導入企業(社員 10,000人以上)は、43.0% まで増加しました。
これ程、注目されているテレワーク。この普及を恐れている人たちがいることをご存知ですか?
今回は、「ワークライフバランスの促進」や「業務の効率化」につながるテレワークの負の側面(デメリット)と対処方法をご紹介します。
執筆者:香本 剛志
freecle Inc. / Exective Officer
テレワークの負の側面(普及のデメリット)
厚生労働省によると、テレワークとは「情報通信機器(ICT)を活用した、時間と場所にとらわれない働き方のこと」を指すのですが、 新型コロナウイルスの影響下で “テレワーク=テレビ会議(例:Zoom, Skype, Teams)” という概念が定着しつつあるように感じます。
このテレビ会議が、聴力に課題のある 難聴者 にとって容易くないことをご存知ですか? 難聴の程度にもよりますが、多くの難聴者は、以下の問題を抱えています。
<難聴者の声(一例)>
- パソコンの操作音がうるさくて会話に集中できない
- 音が悪くて聞こえない
- 画像が粗くて、口元が見えない
- 研修の動画に字幕が付いていないと内容がわからない
- 相手の声が低すぎて聴きとれない
よく聴こえる人にとっては、気にならないノイズでも、難聴者にとっては大きな問題になります。
会話についていけないと、的確な発言ができない。
それはパフォーマンスを発揮する機会の減少にもつながるため、テレワークの普及を恐れいている難聴者も多いようです。
難聴者必見!テレワーク対処方法(3ヶ条)
今回は米国言語聴覚学会が紹介している対処方法をご紹介します。 重要なポイントは「事前情報の共有」「視覚情報の共有」「ノイズの抑制」です。
<聞こえない!! テレワーク問題への対処方法>
①:事前情報の共有
- 議題を共有し、話す順番を決めてから臨む!
- 参加者の情報を共有する!(特に初対面者がいる場合)
②:視覚情報の共有
- 参加者の顔を画面に表示する/表示してもらう!(口元の動きが分かるように)
③:ノイズの抑制
- 発言者以外のマイクミュートを義務化する!(ノイズ抑制)
- ノイズキャンセリングイヤホンを使用する!(同上)
まとめ(著者の想い)
新型コロナウイルスでテレワークが普及する前からテレビ会議を頻繁に利用しています。
私は難聴者ではありませんが、「ゆっくり喋る」「大きく喋る」ことを意識しないと、上手くコミュニケーションできません。
そんな中、米国言語聴覚学会(ASAH)の論文に目を通し、難聴者の方々が困っていることを知り、他人事ではないと感じて記事を作成しました。
上述したテレワークの対処方法は、決して一人では出来ません。
例えば、初めてお話する方が PC のカメラを OFF にしていた時、誰もが「ON にしてください!口元が見えません」と言えるのでしょうか。
抜本的に取り組むためには、”社内の共通ルール” にすることが重要だと思います。
この記事が、一人でも多くの方に届き、「テレワークの負の側面(デメリット)」に気づくきっかけにつながりますように。
出所
厚生労働省, “働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)”
パーソル総合研究所, “新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査:第二回調査(2020)
米国言語聴覚学会, “Working remotely with hearing loss: Tips for virtual meetings"